• 生活習慣病としての歯周病

寒さに震えたこの冬。気がつけば体重増加・・・。こんなことになっていないでしょうか?

生活習慣病は、運動不足、偏った食事、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどの好ましくない生活習慣が関与する病気の総称です。
糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満、高血圧などがそれに含まれます。これらの病気は互いに結びつきやすい性質があるため、
ひとつでも発症すると連鎖的に次の病気発症してしまう傾向があります。 特に、先程の4症候すべてが重なった状態は死の4重奏とも言われており、
がん・心疾患・脳血管障害といった死にいたる病に繋がる序曲に例えられます。
近年、歯科疾患である歯周病と生活習慣病との関係が取り沙汰されていることをご存知でしょうか?

(そもそも歯周病とは??)
歯周病は、細菌感染によって歯茎に炎症がおこる病気です。
歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の狭い隙間に存在する細菌に対して炎症が惹起されるのですが、
その炎症を放置すると歯茎を構成する組織(歯周組織) が破壊されることになり、歯はいずれ支えを失い、抜け落ちることになります。
基本的に歯周病になる・ならないについては、歯周ポケット内の細菌の量および質が決め手となります。
その他にも歯周病の発症と進行には、喫煙、ストレス、遺伝等の様々な因子が関わっています。
それに加えて、糖尿病や肥満等の生活習慣病がその因子に含まれることが明らかになりました。

(糖尿病と歯周病)
糖尿病の患者さんは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作 用不足により、血液中に存在するブドウ糖が十分に使われず、慢性的に高血糖の状態にあります。
この高血糖の状態が長く続くと、細小血管が 早い段階で障害され、細小血管が密に存在する網膜、腎臓、手足に高確率で合併症が発症します。
さらには、比較的太い血管も障害され、脳梗 塞や心筋梗塞等の恐ろしい病気を引き起こします。
歯科疾患では歯周病と糖尿病の関連については古くから言われていました。
その後、様々な調査研究の結果から、糖尿病患者さんが歯周病を罹患しやすく、重症化しやすいことが決定的となり、今では糖尿病の1合併症として認知されています。
すなわち、歯周病と糖尿病はコインの裏表に例えられ、お互いに負の影響を及ぼします。その 一方で、これらとは逆に、歯周病患者さんの糖尿病の状態が改善される と歯周病も良くなること、
さらに、糖尿病患者さんの歯周病治療を行うことによって糖尿病の状態が改善されることも明らかとなりました。



(肥満と歯周病)
肥満症は過剰に脂肪組織が蓄積した状態です。脂肪組織を構成する脂 肪細胞からも、先程の炎症起因物質(TNF-a)が産生されます。これ を理由に肥満は生体内における最大の慢性炎症であると言われています。この脂肪細胞から産生されたTNF-aがインスリンの効きを悪く するため、肥満は糖尿病の原因となるわけです。では、肥満と歯周病の 関連はどうなのでしょうか?実は、TNF-a は、歯周病の病巣から産生 されますが、その産生されたTNF-a自体が歯周病をさらに悪化させ、 放置すれば悪循環に陥ってしまいます。この観点から、肥満と歯周病の関係がわが国で調べられ、
やせている人と比較して、太っている人は3.4 倍、さらに重度肥満の人は8.6倍歯周病にかかりやすいことが明らかにな りました。

(生活習慣病としての歯周病)
今までお話させていただいたとおり、歯周病と生活習慣病とは互いに 負の影響を及ぼし合います。
これらのことを考慮すれば、歯周病 と生活習慣病をそれぞれ独立した別のものであるとして捉えるので糖尿病はなく、
歯周病自体を、互いに結びつきやすく連鎖的に次の病気を危険因子発症する傾向がある生活習慣病の危険因子一亜型として捉えなければならないと考えられます。
糖尿病の予防と治療の基本は、 食事と運動といった生活習慣の改善です。これに加えて、歯科からは継続的な歯科受診による歯周病の管理を提言させていただき、
定期的な メンテナンスを受けていただくことを生活習慣の改善としてお願いしたいと思います。
現在、吹田市歯科医師会は、吹田市医師会にご協力いただき、吹田市民の糖尿病患者さんが歯周病治療を受けやすくなるシステムを模索して おります。
是非ともこの機会に市民の皆様に歯周病に対する関心を高め ていただければと思います。
死の4重奏に対して悪影響を及ぼす歯周病。かかりつけの歯科医 院とともに上手に指揮を執りましょう。



吹田市歯科医師会 大山 秀樹

歯科医療を通じて地域の皆様の永続的な「からだ」と「こころ」の健康づくりに寄与します。
お口のことでお困りのことがあれば、吹田市千里山
大山歯科クリニックにお気軽にご相談ください。
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