• 歯痛の治療から全身の健康管理へ

皆様は、どんな時に歯科医院を受診されますか?
歯が痛い時、入れ歯があわない時、あるいはトラブルはないが悪いところがないかチェックしてほしい時など様々だと思います。
健康福祉動向調査 (厚生省、1999年)によると、過去1年以内の治療経験者の受診理由は、
「むし歯の治療」が最も高く (59.1%)、ついで「抜けた歯の治療」(19.4%)、 「歯周疾患の治療」(7.7%)、検診・指導(6.0%) と続きます。
その一方で海外に目を向けてみると、 米国での歯科受診理由の45.4%は歯科健診であり、歯石除去等の歯周病の予防に関する理由で受診される割合が37.2%にのぼります。
さらに予防歯科における最先進国として知られるスウェーデンでは、90%以上の人々が、定期的に健診や歯のクリー ニングに通われています。
しかし、わが国におけるその割合は、わずか2~3%にしか至りません。北欧のスウェーデンやフィンランドでは、
歯科疾患は幼少の頃から予防することが当たり前であるのに対して、わが国においては、未だ馴染み薄いことの現われであると伺えます。

多くの皆様は、「歯科」と聞けば「抜く・削る・つ める」といった治療のイメージを連想されるのではないでしょうか。
それは、かつて歯科医院が、あの 「耐え難い歯の痛みから解放してくれる唯一の場所 であり、
未だそのイメージが強いからであると思われます。事実、歯科医療の目的における最も重要な項目が、「歯の痛みからの解放」であった時代もありました。

その後、歯科医療の目的は痛みからの解放から日常的な歯の健康管理へと移行していきました。
このことには、1989年に「8020運動」 が提唱されたことが後押しをしていると考えられます。
歯を残すことによって生活の質を向上させることを語ったものです。

事実、平均現在歯数は、すべての年齢階級において年を経るにしたがって増加 していることが伺えます。


平成23年における平均現在菌数は12.2本であり、目標である20本 には達しておりませんが、今後、この隔たりを埋めていく鍵となるのは、北欧における予防管理型歯 「科的な考え方かもしれません。
「厚生労働省は、2000年から「健康日本21」と称した21世紀における国民健康づくり運動を提唱しております。
2013年からはその第2次として10年間の 計画で行われています。その目的の中で健康寿命、健康上問題がない状態で生活できる期間の延伸が謳われており、
生活習慣病の予防に力が注がれています。その生活習慣病の中のひとつとして 「歯周病が挙げられています。
歯周病は、細菌感染によっておこる歯周組織(歯 の周りの組織・歯茎)の病気で、成人における歯の 「喪失の原因の多くを占めます。歯肉の出血や腫れを
特徴とする歯肉炎に始まり、歯を支えている骨にま で破壊が及ぶ歯周炎へと発展する病気です。歯周 「ポケット(歯と歯肉の深い隙間)にデンタルプラーク(歯垢)がたまると
プラーク中の細菌が歯周組織を 「攻撃します。この攻撃に対峙するのが、白血球・リン パ球が主役として働く免疫システムであり、体を細菌 の感染から防御しています。

この戦いの戦場となる 「歯周組織がその反応(炎症)によって破壊されるわけですが、この時産生される様々な因子が、歯周組 「織の破壊のみならず、全身に起こる様々な病気に 「負の影響」を及ぼすことが分かってきました。これまで歯周病が関連すると報告された疾患群には、糖 「尿病、心血管系疾患、肥満、早産・低体重児出産。
呼吸器系疾患、骨粗霧症などがあります。これらの 「ことを受けて、歯科医療の目的が、「歯のみの健康
管理を行なうこと」から「全身の健康管理に関わることへとシフトしつつあります。
すなわち、歯周病を予防あるいは治療・管理を行うことが、これら全身疾患の予防、さらには治療につながるという考え方です。
特に糖尿病と歯周病の関係については様々な角度からの調査・研究が進んでおり、重症の歯周病を 「放置した場合、糖尿病を発症する,あるいはその予備軍になる可能性があること、
さらには、歯周病治療を行うことによって、糖尿病患者様の糖尿病に関 わる臨床値が改善することが明らかとなりました。
この流れを受け、日本歯科医師会と日本糖尿病協会 によって日本糖尿病協会歯科医師登録制度」が創設されました。
登録歯科医師は、協会所属の医師に 「糖尿病患者様を紹介し、協会所属の医師は、歯周病患者様を登録歯科医師に紹介します。
この様に、医科と歯科が連携することによって、患者様の健康 「改善に努める試みが始まりつつあります。

しかし、残念なことに歯周病は、臨床的に病気が重症になるまで自覚的な症状を伴わないことから、 「沈黙の病気」とも称されています。
「歯ぐきが腫れて痛い」、「歯がグラグラする」といった症状を自覚され、歯科医院を受診された時にはもう既に手遅れの状態で、
抜歯を宣告された方も多くおられるの ではないでしょうか。すなわち、かつて歯科医院を受診する動機につながっていた
「痛い→悪い→要 「治療」という方程式が成り立たない事例は数多く存在します。
そこで是非とも皆様方に、北欧型の予防歯科医療のスタイルに倣った歯科受診を日頃から心 がけていただくことをお願いしたいと思います。

吹田市歯科医師会
大山歯科クリニック 大山 秀樹

歯科医療を通じて地域の皆様の永続的な「からだ」と「こころ」の健康づくりに寄与します。
お口のことでお困りのことがあれば、吹田市千里山
大山歯科クリニックにお気軽にご相談ください。
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